古い美術品をデジタルで収める

ボストン美術館の浮世絵のコレクションの一部をテレビ番組がとらえた。
コレクションの寄贈者が、色あせしやすい浮世絵の恒久的な保存を願い、展示を禁止した。
この浮世絵を高精細なデジタル写真技術をつかって記録し、後世に伝えようとするプロジェクトがすすんでいる。

海外の美術館では、古い美術品のコレクションを、デジタル技術で保存する計画がいくつか進行している。ぼくも、そのひとつに少しかかわっている。

このプロジェクトが、浮世絵のそれと大きく異なるのは、作品の種類や大きさがまったく違うため、一様なデータベースや描画表現方法では、ひとつのシステムに収めることができないところだ。
ここでは、やや独創的な発想がポイントになる。
同時に、デジタルで本物の作品の表現にせまればせまるほど、アナログの作品がもつ圧倒的な情報量に唖然とする。

現在、デジタル画像の整理と作品を検索するデータベースの実装がすすみ、芸術的表現のブラッシュアップと作品のカテゴリー、時代、作者などの正確な論理構成を行っているところだ。
全体の進捗過程から考えると、未だ折り返し点よりずっと以前の段階だが、おぼろげながら、コレクションがもつシルエットが、収蔵者がどんな思いであったのかなど、往時をかいまみることができるようになってきた。