江戸で「酢豆腐」、上方で「ちりとてちん」

 「酢豆腐」も「ちりとてちん」も落語の演目だ。
 どちらの話も、食通ぶったキザないんちきグルメの男が、腐った豆腐を食べされられてしまうというストーリー。

 少し、落語を知っているひとなら、「酢豆腐の若旦那のような人物」といったら、そのイメージが浮かぶというくらい有名な話だ。
 
 江戸落語の「酢豆腐」には、今はもう聞くことのない古風で江戸風な、あるい文明開化を彷彿させるオツな言葉が登場する。
 日本文化や古典芸能にふれる授業で、おりおりに紹介している。


 きみがた  あなたがた
 口開(くちあ)けだからねがちゃうかい?  今日の最初だから、たのんじゃおうかな?
 お邪魔になると悪(あ)しゅうがすから   お邪魔になってはいけないと思う
 異なことをおたずね  思いもよらないことを聞くね
 割烹店(かっぽうてん)のものなどは荷(に)でやすな  店で作った食事はあきました 
 二時とおぼしき頃  午前二時過ぎに
 かの姫なるものが  彼女がね
 もちりんでげす   もちろんですとも


 日本語のことばはとても豊かだ。