都の西北

 といえば、早稲田であるが、都の東南といえば、京都宇治だ。


 わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり 喜撰法師


 宇治は平安京の東南にあたる。「たつみ」は辰巳・巽と書き、十二支によって方角をあらわしたときの方位の名称だ。
 「世をうぢ(憂し)山」の句には、自身の憂いを歌に映しているようにも聞こえる。

 
 花の色はうつりにけりないたずらにわが身世にふるながめせしまに 小町


 老いた「我が身」を歌に映した、小町の心境に共通するところがありはしないか。
 まもなく師走。今年一年の納めの月である。